スケープゴート
一部のウェブサイトにおいては、朝鮮人はみな犯罪者・反日的であるとして、ひどく忌嫌われる風潮がある。
実際に不法入国や暴力団関連の問題など、朝鮮人の率が高い犯罪は存在する。
嫌韓の人々は、このような事件の犯人を、すべて朝鮮人であると見なす。
こうすることで、日本人はそのような犯罪をしない、優れた民族だというブランドイメージが保てる。
なんとも便利なことに、朝鮮人と日本人の顔は酷似している。
しかも、日本人と同じような名前を持つ朝鮮人、すなわち在日朝鮮人というグループが存在する。
そのため、名前も見た目も生活実態も日本的である人物であっても、「在日朝鮮人である」と決めつけることで、日本人を守ることができる。
これほどスケープゴートにうってつけの存在はあるまい。
私は多くの朝鮮人・在日朝鮮人の知人が居るため、彼らが我々と大差ない人間であることを良く知っている。
しかし、それらと特に縁の無い人にとっては、日本に居ながら韓国籍である人間というのは、不気味であろう。
生活保護の受給率が桁違いに多いなど、在日のせいで不利益を被っている部分があるのも確かだ。
韓国や北朝鮮といった国家は日本に比べて未熟であり、また歴史的背景による感情のもつれから、面倒事も多い。
それゆえ私個人としては不愉快だが、一部の人間が朝鮮人をスケープゴートとする心情は理解できる。
インターネットの広がりと共にそのような風潮は拡大してきた。
本来デマや誤解であるものが次第に常識として定着してゆき、一部では異常なまでに嫌われるようになった。
今や朝鮮人の扱いが、スケープゴートの域を超えてしまっているように思える。
ここ最近、あらゆる犯罪者を在日朝鮮人だと「認定」する人が増えている。
彼らは理由を持たず、脊髄反射で行っているようだ。
嫌韓の人間はそれに乗っかり、「朝鮮人」犯罪者を感情のままに徹底的に貶める。
そうして尾ひれもついてゆき、数多くの「凶悪朝鮮人犯罪者」のニュースが耳に届くようになった。
冷静にニュースを見ると、結局それらの大半は明らかに日本人であろうことがわかる。
つまり私の目に映るのは、凶悪なる日本人犯罪者を、事情も理屈も知らぬ日本人が、温情の欠片もない暴言を浴びせている様子である。
これほどやるせない気持ちになることがあるだろうか。
別の手段として、日本人犯罪者を「まるで朝鮮人のようだ」と批判することによって朝鮮人を貶めるものがある。
しかし、これは日本人を朝鮮人になぞらえているのであるから、日本人=朝鮮人という図式が出来上がる。
その朝鮮人を貶めれば、同時に日本人も貶められるはずだ。
日本人を守るためのスケープゴートが、日本人を貶める要因となっている。
何も考えずただ朝鮮を批判している人間は、いつこの事実に気づくのだろうか。
気づいた頃にはすでに、日本人は本当の意味で、彼らの定義する「朝鮮人」のような、下等な存在になっているかもしれない。
もっとも、スケープゴートを利用するという卑怯な手段を用いている時点で、彼らは私の友人である朝鮮人達の、足元にも及ばない。
優れた民族でありたければ、他者を貶めるのではなく、自らが精進するしかない。
教科書のような解答だが、なるほど理に適っている。