諺(ことわざ)の使い方
結構な人が感じていると思う.
「善は急げ」なのか「急いては事をし損じる」なのか.
「鳶が鷹を生む」のか「蛙の子は蛙」なのか.
「二度あることは三度ある」のか「三度目の正直」なのか.
諺というのは実にアテにならない.
それもそのはずで,そもそもアテにするものではない.
諺というのは、状況や状態を分かりやすく伝えたり,論理に説得力を持たせたりするために使うものだ.
なのに,ことわざを“根拠”や“理由”として使う例が散見される.
「震災があったらしい.善は急げというから,今から被災地に支援物資を届けよう」
というのは一見正しいように見えるが,物資を調達する手段が無かったり,不足しているものが分からなかったり,目的地への道路が寸断されていれば話にならない.
下手をすると「急いて事をし損じる」ことになりかねない.
物資は用意できる.車も使える.その他の障害もなく,その気になれば直ちに物資を届けられる.
そういう状況がまずあって,なおも行動だけが起こされていない場合に「善は急げ」と言えるのだ.
もっと極端で分かりやすい例でいこう.
いきなり朝青龍と相撲して勝てと言われても,当然負ける.
「三度目の正直だから,次は勝てる」と言われても,勝てないものは勝てない.
事故で妻も子供も失ったとしよう.
「朝の来ない夜はない,いつか悲しみも癒える」と言われても,煩いだけだ.
根拠の伴わない諺なんて,戯言に過ぎない.