上っ面
「NHK NEWS WEB セピア色の写真が語るもの」
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2016_0304.html - 2016年3月24日 16:44 - ウェブ魚拓
この記事が、Facebookで紹介されていた。
内容を要約すると
・ある人の実母は幼い頃に亡くなり、育ての親は継母だった
・実母の写真等はその妻に託され、本人には秘密にされた
・隠していた写真が東日本大震災のときに出てきたが、妻は改めて隠した
・今年になって妻が死期を悟り、全てを打ち明けた
というものだ。
本文の冒頭では
"震災によって、ベールに覆われていた過去と思いがけない形で向き合うことになった家族がいます。"
と述べられており、内容は東日本大震災に関わるものだということが主張されている。
しかしながら、写真はもとから隠していたもので、震災で出てきたにも関わらず、また隠した。
すなわち、震災によって写真の扱いは何も変わっていない。震災はこのストーリーに特別な役割を果たしていないのである。
この筆者も、それに気づいているようだ。最後の方では
”このファミリー・ストーリーに出会ったのが、震災の被災地だったことも象徴的に感じられます。”
と書かれている。
本当に震災が絡む話であれば、ストーリーとの出会いが被災地なのは至極当然のことであり、象徴的などという感想は出てこないはずだ。
結局のところ、場所、以外に関連性がないと言い訳しているに過ぎない。
”被災地を襲った深い喪失感を、私たちの社会はもう記憶の隅へと追いやろうとしていないか。”
などという問題提起をしているが、この記事こそ、関連もないのに震災という言葉で気を引き、真に記憶すべきものを見えにくくしているのだ。
なんという欺瞞か。
ちなみに、記事を紹介した人物によれば
上っ面の震災○○年企画は、いらないのです。
こんなに深く、命を見つめられる心なくして、
まして、視聴率やスポンサーの顔色なぞを伺っていては、
良い取材者ではありえないと思います。
だそうだが、上っ面なのはどちらか、明白であろう。